• 2005.05.31 Tuesday

近づけば傷つくのに〜「クローサー」

先日ふらっとみた映画の感想など。
(mixiの映画レビューといっしょやん、ってツッコミはなし! ちょっとは変えてます)

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精神的に大人あるいは鈍感、あるいはタフな人のための映画。4人の出演者も20代、30代、40代と多彩だがこれは10代のコムスメがみてもあんまりオモシロクないでしょ。理解できないまでも共感するためには、ある程度の人生経験が必要な気がする。4人にそれぞれ共感しまくって疲れてしまったワタシは…、はい、修羅場経験だけはムダに豊富です、どははショック

◎そこまで言うか〜のエロ会話満載◎
R-15指定なのにエッチなシーンは一切なし。そちらを期待するムキにはお勧めできない。ただし会話がエロい。実生活でも、あんなこと、こんなこと、あそこまでガンガン言葉にしてやりとりできれば、さぞかしスカっとするに違いない。フーゾク的で過激な言葉が軽やかにリアルに紡がれていく過程で、どこかでかすかに知性に訴えてくる、という点でまさにおとな〜な映画なのだ。コトバは過激でも言ってる本人たちは真剣、だからこそ切なくもどこかコミカル。ぽんぽん飛び交うセリフの1つ1つが(たとえどんなにエロくても)よく練られていて、演劇的な展開だなあ、と思ってたら、なんと元は舞台だったのね。納得。

出演の4人が豪華絢爛〜という以外あまり予備知識もなく、たまたまタイミングがよかったのでみた映画だったが、気分的には大当たり。最初10分を見逃したけど、あまり大勢に影響はなかったと思う。ストーリーそのものより、4人がくっついて離れて裏切って裏切られて嘘ついてバレて真実知って傷ついて…という一見複雑で実はシンプルな心理と行動そのものがテーマだから(でもオープニングが印象的という声をう後から聞き、実は再度みようかしらん、とも思っていたり)。

◎主演も助演もない下克上的chemistryが充満◎
豪華キャスト4人の中では、ジュード・ロウ(ダン)がいちばん損な役回り。現実にこういう人がいたら、いくら美形でもやだね。でも、やだね〜と思うほどに惹かれることもあるわけで。そこが困ったところ。ちょっと間違ったらストーカーになっちゃう粘着質ネバネバ〜な優男くん、情けない泣きっぷりまでみごと。いろんな意味でまったくもって「困ったちゃん」なダンがいなければ、この物語は成り立たないので、ダンは4人のベクトルの一番最初に位置するキーパーソン。ってことで一応、主演。でもこの映画「助演」が賞を総なめにしてるみたい。ジュード・ロウの芝居は正統派すぎて、かすんだか。

アンナ役のジュリア・ロバーツは、魅力的なサクセス・ウーマンの役を割とおとなしめに演じている(だから助演に喰われた?)。なんだか訳のわからない行動を取るけど、そんな自分を持て余し気味、でもどうしようもない、っていうアンナを「わかりやすく」表現していたと思う。どんなに才媛であってもわけがわからん人生だってあるのだ。成功した写真家であり、芯がしっかりしているからこそ、恋愛でブレまくってしまう。決して奔放なわけじゃないんだが、こういうブレ方をする女性は多いはず。でもジュリア・ロバーツには、こういう内省的な役より、ガハハと笑って元気に突っ走る「エリン・ブロコビッチ」の方向性をとことん極めてほしいな。

ナタリー・ポートマンは、ハスッパだけど一途な感じを自然に出していて秀逸。彼女が演じるアリスが、もしかしたら登場人物の中で一番賢いのかもしれない、と思わせるうまさも、あざとくならないのが若さの強み。でもさ、ストリッパー役として、小ぶりでも形のよいオッパイとぷりぷりヒップをぎりぎりまで見せてるけど、もっと潔く! ヨーロッパ系の女優は、あんなに可愛かったソフィー・マルソーだってバンバン脱いだではないか。必然性なくヌードになる必要はないけど、この映画ではハダカは必然だし、脱がないほうが不自然。そこだけ、不満。おっさん的な不満だけじゃなく、物語的にも。後々「あの作品で脱いでおけばよかった」なんて後悔しないとも限らない。逆説的にはストリッパーなのにヌードシーンがないこと自体が、この映画の意味なのか?と勘ぐってみたが、やっぱりただの出し惜しみっぽい。

一方、「キング・アーサー」ではなんとも地味ぃな王様だったクライブ・オーウェンがここでは生き生きとラリーを熱演。不健康に見えるぐらいヒゲ跡まっくろなのも、絶倫な感じにはぴったりで、うそくさいほどイヤらしく強烈なセリフも彼が吐くとリアルで迫力がある。これもあとから知ったけど、彼はやっぱ舞台俳優だったんだね。道理でセリフまわしがウマイ。ちなみにオーウェンは舞台版で、ダンを演じたそうだ。うーん、だから映画では楽しそうなのか。ダンが子供じみた屈折だとしたら、ラリーは円熟した紆余曲折。人生いろいろありますわな、でもオレはこれだけは譲れんのだよ、悪いな、ふっふっふ、っていう屈折おやじが暴言・暴走の嵐で、屈折坊やダンを圧倒する。

◎原作で、さらなる追体験を!◎
4人が一堂に集う唯一の場面で、アリスがアンナを称して"She is very...tall"と言う場面があった。調べてみるとナタリー160cm、ジュリア175cm。確かにね、ナタリーちっこいわけだ。ちなみに男優陣は180cmと189cm。アーサー王、そんなにデカかったのか。

主要キャラがたった4人で、時間軸は前触れもなく行ったり来たりし、会話が延々と続く展開だから、嫌いな人には耐えられないほど退屈な映画だろう。でも深いよ。後味がよくもなく悪くもなく、ため息は出るけど悲しいほどじゃない。ネカマチャットするなど、ちょこっと笑えるシーンもあり。どっぷりハマった証なのか、帰宅後、即、Patrick Marberの原作をamazonで注文してしまった。今一度、あのエロくも直截真剣な会話劇を体験してみたい誘惑に負けたよ。

アマゾンにオーダーして1週間。まだ来ない原作を待ち焦がれる毎日なのだった。

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