飲み会で遅くなり、午前0時過ぎの中央線に乗り込む。
東京駅始発なので座って、うつらうつら〜としてたら、不意に大声がした。
「なんじゃらかんじゃらうんぬんかんぬん…」
声の主は、向かいの席に座ってた酔っ払いの陽気なおっちゃんだった。
隣に座ってたおねーちゃんに話しかけ、肩をたたき、笑いこける。
悪気はないのだな。酔っ払って話ししたいんだな。ただ何言ってるんだか、わからん。
隣のおねーちゃんは、いやそうな顔をして、そのうち立ち去ってしまった。
その次に隣に座った人も、すぐどこかへ席を移った。
しばらくするとおっちゃんの周りはだれもいなくなった。
でも、おっちゃんはひとりでしゃべり続けている。
そうこうするうち、新宿で人がどっと乗ってきて、混んで来た。
私の前にも人が立ち、向かいの席が見えなくなった。
またしても、うつら〜とし始めた私だが、すぐに目が覚めた。
何か違和感。そう、おっちゃんが静かなのだ。あれれれれ?
降りたのかしらん。
人の間からちょっと覗いてみると…。
おっちゃんには友達ができていた!
隣に座った男の子と楽しそうに、大きな声じゃなく普通の声で話している。
相変わらず、話しながら肩をたたいたりして、ご機嫌。
支離滅裂な話をしているようだったが、なんだかほほえましかった。
隣の男の子は、いっしょうけんめい話を聞いてあげているので
おっちゃんは、これ以上ないぐらい上機嫌なのだ。
そんなふたりの姿は、ほんとに友達のようだった。
終電間際の中央線には他にも、口ゲンカ真っ最中のカップルとか、
パーティ帰りのキレイなおねーさんとか、お仕事帰りの疲れたおとーさんとか、いろんな人が乗り合わせ、偶然のひとときをいっしょに過ごす。
何の連帯感も脈絡も、あるわけないのだが、そのひとときがふと不思議に思えて、なんだか電車を降りるのが寂しくもあった。